今回のテーマは、歯のフィステルを放置した場合の治療法です。
フィステルとは、歯肉にできる「おでき」のようなものです。


見た目は、白かったり、赤かったり、ぷくっと膨らんでいること多いです。

歯のフィステルの一般的な特徴は、歯肉の直径3から5ミリ程度の腫れ、歯からは数ミリ離れて腫れている、触っても痛くはないといったものです。

痛みが無いので気付かない場合が多いので、もしかしたら自分の口にも?と心配な場合は確認してみて下さい。

なぜフィステルが出来てしまうかを説明します。ひとつ目が、歯根が割れている場合です。

一度神経の治療を行うと、歯は割れやすくなります。

神経の治療後、力が加わったタイミングで歯根が割れてしまい、フィステルができます。

神経の治療後の歯に金属の土台を入れると、歯根が割れやすくなります。

また、噛む力が強い方や歯ぎしり、くいしばりのある方も奥歯の歯根が割れやすくなります。


フィステルができるふたつ目の原因は神経が死んでいる場合です。

深い虫歯の場合、神経ギリギリのところで治療をすると神経が気付かないうちに死んでしまうことがあります。

虫歯治療をした歯がいつになってもしみる感じがある場合、気付かないうちに神経が死んでいる可能性があります。

完全に神経が死んでしまうと痛みは消え、そして、症状がなくなった時にフィステルが現れます。

また、歯をぶつける等の外傷により神経が切断され神経が死んでしまうこともあります。

フィステルができる3つ目の原因は、歯の神経の治療がうまくいっていない場合です。

歯の中には神経が通っている管があるのですが、その管が曲がっていたり、狭窄してせまくなっていたりすると、

歯根の先端に膿が溜まり、フィステルができてしまいます。

また、一度神経の治療を行ってもまたフィステルが再発する場合は神経の治療がうまくいっていない可能性があります。

フィステルができる4つ目の原因は歯周病の場合です。

歯周病が進んでくると膿が歯茎から出てくるのですが、大抵は歯周ポケットの隙間から膿が出てきます。

ところが、歯周ポケットが閉じている場合は、フィステルができ、そこから膿が出てきます。

同じように、インプラントが歯周病になった場合もフィステルができることがあります。

インプラントも自分の歯と同じように歯周病にかかります。

インプラントと歯茎の隙間から膿が出ることが多いですが、

症状が悪化するとフィステルが現れ、膿が出てきます。

患者さんの中には、インプラントのケアは必要無いと考えている方もいらっしゃいますが、インプラントもご自身の歯と同じように丁寧なセルフケアと定期的な検診が必須です。

このように、

歯の根が割れている場合、虫歯や外傷で神経が死んでしまった場合、根の治療がうまくいっていない場合、歯周病の場合、根の先に膿が溜まります。その膿の出口がフィステルなのです。

フィステルは根の先に膿が溜まるとでき、破れて膿を出します。

破れると膿は無くなりますが、また膿が溜まり、腫れ、破れる、を繰り返します。

根の先にたまった膿の袋は徐々に大きくなり、周りの歯の根を溶かしたり、神経を死なせてしまったりすることがあります。

長期間そのままの状態が続いたフィステルは抜歯が必要になってしまうこともあります。

歯のフィステルを放置した場合の一般的なフィステルの治療法は感染根管治療です。

感染を起こした歯根の歯質を除去し、消毒し、最終的には歯の神経の代わりになる薬を入れて密閉し、菌を無くす方法です。

少しでも細菌に侵された根が残ってしまうとそこからまた細菌が増え、フィステルは治りません。

歯のフィステルを放置した場合、感染根管治療でフィステルが治らなかった場合などは、麻酔をし歯茎の方から切開して、膿の袋を取り出す方法もあります。

膿の袋を取り出した後は自然に骨ができてきます。


奥歯には根が2本3本に分かれており、歯のフィステルを放置した場合、そのうちの1本を膿の袋と一緒に抜歯する方法もあります。

この治療法を、下顎はヘミセクション上顎はトライセクションと呼びます。

歯のフィステルを放置した場合の治療法は歯の周りの骨が溶けている可能性もあるので感染根管治療ではなく、完全抜歯になる可能性もあります。

歯のフィステルを放置した場合の治療法は抜歯になってしまうことが多いので、早めに歯科医院で診てもらうことが大切です。

抜歯して歯が無くなってしまった場合には、インプラントやブリッジでの治療が必要です。

定期的にレントゲンを撮り、膿の袋が溜まっていないか確認することをおすすめしています。


「歯のフィステルの治療方法まとめ」

・フィステルの原因はいろいろ考えるため、原因の特定そのものが難しい。

・根管治療が必要な場合がある。

・破折している場合は抜歯が必要なこともある。

・治療には覚悟が必要。無症状であれば、治療せずに様子を見ることも選択肢になりえる。


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