こんにちは。歯科衛生士の菊地です。今回のテーマは急に歯がしみる時にまず確認すべき事です。

急に歯がしみる原因は、大きく分けて3つあります。

急に歯がしみる原因は、まずひとつ目が「知覚過敏」です。

冷たい物や甘いものがしみたり、冷たい風がしみたりするような症状が現れます。

歯周病や、過度なブラッシング圧や、歯ぎしりくいしばりが原因で、歯肉が下がります。

歯肉が下がると知覚過敏の症状は特に出やすいです。

歯の表面には硬くて頑丈なエナメル質という層があります。

エナメル質は、歯冠の方は分厚いのですが、歯の根の先端の方に近づけば近づくほど薄くなります。

また、エナメル質の中には象牙質という層があり、更に歯の中央には歯髄腔といういわゆる歯の神経が詰まっている層があります。

歯周病、過度なブラッシング圧、歯ぎしりやくいしばりで歯肉が下がると、エナメル質が薄い、歯根寄りの歯の表面が露出してきてしまうので、歯の中の神経に刺激が伝わりやすくなってしまいます。

刺激が伝わると、「痛い」「しみる」などの症状を体感するようになります。

歯ぎしりやくいしばりで、歯頚部と呼ばれる歯の根元の部分が欠けてしまうこともあります。

この場合も、表面のエナメル質が欠けて薄くなってしまうので、しみやすくなってしまいます。

更に、過度な刺激を繰り返すと、歯髄腔の中の神経が炎症を起こしてしまい、一過性の知覚過敏ではなくズキンズキンと後に残るような拍動性の痛みが生じることもあります。

拍動性の痛みが出ると、重度の場合は神経を抜く場合もあるので、その前に知覚過敏の対処をする必要があります。

知覚過敏の場合、対処法が三つあります。

ひとつ目は、知覚過敏用の歯磨剤を使う方法です。

歯の神経に刺激が伝わる際に、先ほどお話しした象牙質の象牙細管という管を通って刺激が伝わるのですが、知覚過敏用の歯磨剤には、例えるならその象牙細管にフタをするような薬効成分が入っています。

日常的にその薬の成分を作用させることで、徐々に知覚過敏の症状が緩和されます。

ふたつ目の対処法は、知覚過敏用の薬を塗る方法です。

各メーカーによって薬の作用は違いますが、当院で使用している知覚過敏の薬は、歯肉が下がり、露出した歯面に薬で薄い膜を貼り、外からの刺激を神経に伝えないように遮断する、という作用があります。

即効性があり、薬を塗る前に風をかけてしみていた部分が、薬を塗った後はすぐにしみなくなります。

しかし、永久に歯面に残る薬ではないので、食事をしたり、ブラッシングの回数を重ねたりするうちに、少しずつ剥がれてきてしまう薬でもあります。

 

 

 

知覚過敏が軽度の場合は、一度知覚過敏の薬を塗って刺激を遮断することで、歯の神経の炎症も落ち着き、症状自体もすぐに軽減しますが、知覚過敏の症状が強い場合には、何度か繰り返し薬を塗る必要があります。

なかなか知覚過敏の症状が落ち着かない場合には、塗り薬に加え、更に知覚過敏用の歯磨剤の併用もすすめています。

三つめは、コンポジットレジンという樹脂で歯頚部の欠損を埋める方法です。

この方法は、歯肉が下がった時よりも、歯ぎしりやくいしばりで歯の根元が欠けてしまった時に有効な治療法です。

 

 

虫歯の治療と同じように、歯の表面を少し削ってざらつかせ、そこに頑丈なコンポジットレジンと呼ばれる樹脂を盛ります。

コンポジットレジンは知覚過敏用の塗り薬よりは頑丈なので、一度の治療でしみにくくなるのですが、樹脂という素材の特性上、変形しやすく、水分や汚れを吸収しやすい材料なので、変色しやすかったり、変形した部分に汚れが溜まりやすくなったり、外れやすかったりというデメリットもあります。

コンポジットレジンを盛る前に歯を少しですが削らなくてはいけないということもデメリットの一つかもしれません。

ですので、当院では深刻な知覚過敏の方以外は、知覚過敏用の塗り薬や、歯磨剤でできるだけ対処するようにしています。

また、歯周病で歯肉が下がった場合もしみやすくなるので、丁寧なセルフケアや、定期的な歯科医院でのメインテナンスを行い、歯周病の予防や治療を行う事も大切です。

 

歯が急にしみる原因のふたつ目が、「虫歯」です。

歯の表面だけが虫食っているような初期虫歯の場合はしみることはほとんどありませんが、虫歯が進行して深くなり、歯の神経に近くなるとしみる症状が出てきます。

虫歯の場合も、冷たい物、甘いものがしみますし、熱いものがしみることもあります。

歯の表面に穴が開いている場合は自分でも虫歯だと分かりやすいかもしれませんが、歯と歯の間が虫歯になっていたり、以前虫歯の治療をした詰め物の下に二次的な虫歯ができていたりする場合は、自分で虫歯になっていることに気付きにくく、なぜしみているのかご自身では分からないことも多々あるかと思います。

歯と歯の間や、詰め物の下の二次的な虫歯の場合は、レントゲンを撮ることで虫歯が見つかることもあります。

虫歯の場合は、まず虫歯になっている部分を削る治療が必要です。

その後は、虫歯の大きさによって、部分的な詰め物や樹脂を盛って治療する場合もあれば、被せ物で治療する場合もありますし、虫歯が大きく神経まで到達してしまっている場合には、神経を抜いて被せものをすることもあります。

歯が急にしみる原因の3つ目は、歯が欠けている、割れていることです。

何か硬いものを噛んだタイミングで、歯が欠けてしまうこともあれば、硬いものでなくても、歯は日々使用するものなので、経年劣化を積み重ね、もろくなってきたタイミングで柔らかいものを噛んでも欠けることがあります。

目で見えるほど大きく欠けていることもあれば、マイクロクラックと呼ばれる微小な目で見えないヒビが歯冠や、歯根にまで入ってしまうこともあります。

マイクロクラックは、まれにレントゲンにも映らないくらい小さいこともあります。結構厄介な存在です。

歯が欠けたり、ヒビが入ったりすると、そこから神経に刺激が伝わりやすくなり、しみるという症状が現れます。

歯冠が欠けたり割れたりした場合には、虫歯の治療と同じように、欠けた部分を詰め物や被せ物で補綴して治療します。

歯根が割れてしまった場合には、神経を抜いて被せたり、状態が悪い場合には残念ながら歯を抜かなければいけません。