今回は増骨手術について紹介します。
インプラント相談に来院された患者さまから、
「骨が足りないのでインプラントができないと言われました」
「増骨手術が必要と言われたのですが、どんな手術ですか?」
「骨が少なくてもインプラントはできますか?」
というご質問をいただくことがあります。
実際、歯を失ってから長期間経過している場合や、歯周病によって骨が減ってしまっている場合は、そのままではインプラントを埋入できないことがあります。
しかし、骨が足りないからといって必ずしもインプラントを諦める必要はありません。
現在では骨を増やす「増骨手術」という治療法があり、多くのケースでインプラント治療が可能になっています。
今回は、インプラント治療における増骨手術について、実際の相談事例や患者さまからよくいただく質問を交えながら詳しくご紹介します。
なぜインプラントには骨が必要なの?
まず、インプラントの構造について簡単にご説明します。
インプラントは顎の骨の中に埋め込む人工歯根(フィクスチャー)と、その上に装着する人工歯で構成されています。
天然歯には歯根がありますが、インプラントではチタン製の人工歯根がその役割を担います。
この人工歯根は顎の骨としっかり結合することで、噛む力に耐えられるようになります。
そのため、
十分な骨の厚みや高さがなければインプラントを安定して支えることができません。
家を建てる際にしっかりした基礎工事が必要なのと同じように、インプラント治療でも骨は非常に重要な土台になるのです。
骨が少なくなる原因とは?
患者さまの中には、
「昔は普通に歯があったのに、なぜ骨が減るのですか?」
と疑問に思われる方もいらっしゃいます。
実は顎の骨は使われなくなると少しずつ痩せていきます。
特に次のようなケースでは骨が減少しやすくなります。
歯を失ったまま放置している
歯が抜けると、その部分の骨は刺激を受けなくなります。
すると身体は不要になった骨と判断し、徐々に吸収されていきます。
重度の歯周病
歯周病は歯ぐきだけの病気ではありません。
進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまいます。
外傷や感染
事故や重度の虫歯による感染が原因で骨が失われることもあります。
実際によくある相談事例
60代の患者さまから、
「10年以上前に抜歯したままにしていた歯をインプラントにしたい」
というご相談を受けたことがありました。
CT撮影を行ったところ、抜歯した部分の骨が大きく吸収されており、そのままではインプラントを埋入できない状態でした。
患者さまは
「歯がないだけだと思っていたのに骨まで減っているなんて知りませんでした」
と驚かれていました。
このようなケースは決して珍しくありません。
実際の診療現場では、歯を失ってからの期間が長いほど増骨手術が必要になる傾向があります。
増骨手術とは?
増骨手術とは、
不足している骨を補い、インプラントを安全に埋入できる状態にするための治療
です。
骨を増やす方法はいくつかあり、骨の量や状態によって最適な治療法を選択します。
当院で行っている主な方法は、
- GBR(骨誘導再生法)
- サイナスリフト
- ソケットリフト
の3種類です。
GBR(骨誘導再生法)
最も一般的な増骨手術のひとつです。
GBRとは「Guided Bone Regeneration」の略で、日本語では骨誘導再生法と呼ばれます。
どんな時に行うの?
インプラントを埋入する部分の骨幅が不足している場合に行います。
比較的小規模な骨造成で対応できるケースに適しています。
治療の流れ
インプラントを埋入した後、その周囲に人工骨を補填します。
さらにメンブレンと呼ばれる特殊な膜で覆い、骨が再生するスペースを確保します。
その後歯ぐきを縫合して治療は終了です。
治療期間
骨が成熟するまでには個人差がありますが、およそ4〜6か月程度かかります。
サイナスリフト
上顎の奥歯にインプラントを入れる際によく行われる増骨手術です。
なぜ必要になるの?
上顎の奥には「上顎洞」という空洞があります。
骨が薄い場合、この空洞が邪魔になりインプラントを十分な深さまで埋入できません。
そのため上顎洞の粘膜を持ち上げ、骨を増やす必要があります。
対象となるケース
一般的には骨の厚みが5mm以下の場合や、多数歯欠損の場合に適応となります。
治療の流れ
歯ぐきを切開して骨を露出し、小さな窓を作ります。
そこから上顎洞粘膜を慎重に持ち上げ、できたスペースに人工骨を補填します。
その後縫合して終了となります。
治療期間
骨が安定するまで約6か月程度かかることが一般的です。
サイナスリフトの注意点
サイナスリフトは比較的大きな手術になります。
そのため術後に、
- 腫れ
- 痛み
- 内出血
が出ることがあります。
私たちも術前説明の際には、
「旅行や大切なイベントの直前は避けた方が安心ですよ」
とお伝えしています。
実際に患者さまから、
「思ったより腫れてびっくりした」
というお声をいただくこともあります。
もちろん個人差はありますが、術後1週間程度は安静に過ごせるスケジュールをおすすめしています。
ソケットリフト
ソケットリフトも上顎奥歯に行う増骨手術です。
サイナスリフトよりも侵襲が少ない方法になります。
適応となるケース
骨の厚みが5〜8mm程度残っている場合です。
治療の流れ
インプラントを埋入する穴から専用器具を用いて上顎洞底部を持ち上げます。
そこへ人工骨を補填し、状態によっては同時にインプラントを埋入します。
サイナスリフトとの違い
ソケットリフトは傷口が小さいため、
- 腫れが少ない
- 痛みが少ない
- 身体への負担が軽い
というメリットがあります。
手術後の注意事項
どの増骨手術でも術後の管理が重要です。
特に手術当日は、
- 飲酒
- 激しい運動
- 長時間の入浴
は控えていただきます。
また上顎の増骨手術後は、
- 強く鼻をかむ
- ストローを強く吸う
- 風船を膨らませる
など鼻に圧がかかる行為は約1週間避けていただきます。
実際に術後説明をすると、
「そんなことまで関係あるんですか?」
と驚かれる患者さまもいらっしゃいます。
しかし骨が安定する大切な時期ですので、しっかり守っていただくことが成功につながります。
手術が怖い方へ
インプラント相談の際に最も多い不安が、
「手術が怖いです」
というものです。
実際、歯科医院で働いていてもこのご相談は非常によく伺います。
そのため当院では静脈内鎮静法にも対応しています。
静脈内鎮静法は点滴でお薬を投与し、ウトウトと眠っているような状態で手術を受けられる方法です。
「気付いたら終わっていました」
とおっしゃる患者さまも少なくありません。
手術中は麻酔科医が全身状態を管理するため、安心して治療を受けていただけます。
歯科衛生士として感じること
インプラント相談を担当していると、
「骨が足りないと言われたから諦めていました」
という患者さまに出会うことがあります。
しかし、現在は増骨技術の進歩によって治療できるケースが大きく増えています。
もちろん全ての症例で可能とは限りませんが、
まずはCT検査で現在の骨の状態を正確に把握することが第一歩です。
自己判断で諦めてしまう前に、一度相談していただきたいと感じています。
まとめ
増骨手術は、骨の量が不足している方でもインプラント治療を可能にするための重要な治療です。
主な方法として、
- GBR(骨誘導再生法)
- サイナスリフト
- ソケットリフト
があり、骨の状態に応じて選択されます。
インプラント治療を安全かつ長持ちさせるためには、十分な骨量の確保が欠かせません。
当院ではレントゲンやCTによる精密検査を行い、一人ひとりに適した治療計画をご提案しています。
「骨が足りないと言われた」
「インプラントができるか知りたい」
という方は、お気軽にご相談ください。まずは現在のお口の状態を確認するところから始めていきましょう。
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